横浜地方裁判所川崎支部 昭和42年(借チ)2号 決定 1967年10月04日
申立人 伊藤サワ
右申立代理人弁護士 谷正男
相手方 三平浅夫
主文
相手方に対し金二四六、〇〇〇円を支払うことを条件に、申立人が別紙目録(三)記載の増築をすることを許可する。
理由
本件申立の理由は、昭和三〇年四月一日申立人は相手方から別紙目録記載(一)の土地を木造その他堅固でない建物所有の目的で期間を二〇年と定め無断増改築禁止の特約付で賃借し、昭和三九年七月一日以降一ヶ月金六一五円の賃料を支払っており、右地上に昭和四年頃建築された別紙目録記載(二)の建物を所有して、これを娘婿である平井荘寿に無償で使用させているが、平井方は夫婦のほか長男(高校三年)、二男(中学三年)、長女(音楽学校中等部一年)の勉強部屋として別紙目録記載(三)のような規模構造の二階を増築する必要に迫られているが、小田急線向ヶ丘遊園駅まで徒歩約一〇分の位置にある本件土地の周辺には既に二階家も建ち、また、二階家に増築することによって周囲の土地建物にさしたる影響を及ぼすこともないのに、相手方は申立人の増築を承諾しないから、右増築の許可を求める、なお、本件土地を更地と仮定して評価した時価は三・三平方メートル当り金六〇、〇〇〇円が相当であり、申立人が賃借するに際して金五〇、〇〇〇円を、前賃借人が金四〇、〇〇〇円をそれぞれ相手方に支払っているというのである。
相手方は、申立人が従前になした増改築の際に確約したように約定賃借期間満了と同時に本件土地を明渡すことを確約するならば今回も増築を承諾する、本件土地の更地としての時価は金一五〇、〇〇〇円乃至二〇〇、〇〇〇円であって、増築を認めると今後少くとも二〇年以上賃貸期間が延長されることになるので、鑑定委員会の意見のように金二五二、〇〇〇円の給付を受けるだけでは安きに失すると述べた。
よって、証拠を検討してみるのに、申立理由として遂げられた各事実はいずれもこれを認めることができ、これに鑑定委員会の意見を参酌すると、本件土地に申立のような増築をすることは、土地の通常の利用上相当とすべきものと認められるが、右増築により本件建物の耐用年数が今後二〇年以上延長される結果となるものと認められるので、前記認定の借地権の残存期間、土地の状況、並に借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮したうえ、当事者の間の利益の衡平を図るため、主文掲記の金員を申立人から相手方に給付させるのを相当と認め、これを条件に本件申立を許可することとし、主文のとおり決定する。
(裁判官 福森浩)
<以下省略>